物語は心の栄養素

アニメや美女ゲなど、”物語”で感じた想いを保管するためのブログです

マンガ『せんせいのお人形』感想 ~教師の男に引き取られた荒んだ心の少女、互いの成長と愛の物語~

【あらすじ】

女子校の倫理教師の男が身寄りの無い少女を引き取る。
少女に生きる事を説き、荒んだ心を持つ少女が急激に成長していく。

そして自分を識った少女は男を愛し、男も少女へ惹かれていく。
保護者と子供、立場の違い、様々な障壁から葛藤する二人。

正しくあろうとする男。
幸せな日常を壊したくない少女。
そんな二人の愛の行方とは。

 

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↓ 配信サイト様(COMICO公式) ↓
https://www.comico.jp/comic/130

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以降、ネタバレ注意!!!

 

 

 

※以下内容は、私の個人的な感想です。
 誤字や文法間違い、解釈違い等があるかもしれません。
 寛大な心でよろしくお願いします。

 

【この物語の面白さ】

僕なりには以下の3点が、この作品の魅力なのかなと思います。

 

▶1:普通の恋愛物と関係性の構築順序が違う

普通の恋愛は、恋して⇒愛して⇒家族になるっていう順序が普通。
でもこの物語では、最初に昭明がスミカを引き取り家族として始まる。

だから関係性を深めるために恋して付き合って、一緒に同棲してとか一般的なプロセスがとれない所が面白い。
昭明さんとスミカは既に家族だから、付き合って一緒にいる時間をより増やす事は出来ないし、既に互いにどんなに人間かをさらけ出している。
こんな状態の二人の恋ってきっと、もう恋を通り越して既に愛なんだろうって感じる。

 

▶2:昭明が『正しい道』を模索する葛藤

昭明さんは学生時代に定時制の先輩である遠藤フチを好きになったが、彼女を救うことが出来なった過去を持つ。
だからスミカの事を引き取る事になった今回は、絶対にスミカを救うために『正しい道』から逸脱しないよう、厳しく自分を律してスミカと交流していく。

そして昭明さんが生真面目に信じる『正しい道』には、子供を引き取った保護者がその子と恋をしてしまう事なんてあってはならない事。
だから昭明さんは頑なにスミカとの生活が如何に幸せで、海のデートなどで彼女と触れう事で心が満たされたとしても、それは『正しい道』とは真逆の事だから常に心を凍らせてしまう。

荒んだスミカを救っている昭明さんも『正しい道』をとらなければならないという、確執に縛られている。ただの善人でも、ただの先生でもなく、昭明さん自身も変わりながら進む物語が美しかった。

 

▶3:スミカの昭明さんへの恋心の葛藤

スミカと昭明さんには、以下の二つの関係性がある。

  • 「生徒」と「先生」
  • 「子供」と「保護者」

この二つの関係性がスミカの昭明さんへの恋の障害となっている。
スミカが昭明さんの事が好き好きでたまらないのに、育てて貰った恩とかを考えて伝えられない所や、六花に入学してからは生徒と保護者として距離をとることにヤキモキしている所が、特に胸にキュンときて面白かった。

 

 

【好きなシーン・セリフ】

特に感情を動かされたシーンやセリフをピックアップしてみました。

 

『六花入学試験面接時「愛」について聞かれた時のスミカの回答』

スミカが昭明さんから受け取った「愛」を丁寧に言葉にしているシーンが、スミカの成長とか彼女本来の優しさを感じられて大好き。
あとスミカがここまで自分の思っている事を言語化で出来るようになったのも、昭明さんの愛のある教育の賜物だなって感じるのと、学ぶって事の本来の意義をしみじみ感じて良き…

「私は最近になってようやく動けるようになった気がするんです」
「私は少し前までなにも聞こえなくて なにも見えてなくて なにも感じない」
「人形か何かみたいにその場にいるだけの」
「そんな人間だったような気がします」
「でも…そんな私に」
「その世界に音があって 光があって」
「私には考える事ができるんだって教えてくれた人がいるんです」
「それは少しずつ殻が破けていくみたいな」
「―そうだ」
「かんじかんだ手に血が巡ってくるような感じで」
「私がようやく人間になった…」
「「それ」は「愛」より他にないだろうと そう思います」
中略
「私が受けた「愛」はその人から貰ったものだけではなくて 他の…友達や」
「もしかするとその人たちの親とか」
「もっともっと前から受け継がれているものなのかもと今なら思います」
「いつか私も「それ」を誰かに手渡せるような人になれたらいいな と思うんです」

 

※せんせいのお人形3巻:第41話わたしの創造主 より引用

 

『昭明さんの「色彩」という詩』

人間の性格というか、その人の魂というか、そういうものを「色彩」として呼ぶことで、様々な人から貰った色を使って描いた絵画が自分自身になる事が表現されている。

ただ誰かに貰った色が自分自身になるわけじゃなくて、その受けとった色を使って自分自身の考えで描いた絵画こそが自分になるって所が、自己の在り方を表していて凄く素敵な詩だなって思う。

色彩

譲り受けた古い絵の具の箱に
一つずつ色を貰う

好きな人から
尊敬する人から
時には苦手な人から
そしてまだ見ぬ人から

筆を持ち
繊細なタッチで
堂々としたストローク
そうして書いたあなた自身

あなたも知らぬうちに手渡している
僕からも一つ差し上げます

※せんせいのお人形6巻:第95話色彩 より引用

 

『生まれつき悪い子供なんていないよ…』

この言葉が昭明⇒一佐⇒スミカに渡りながら、一佐やスミカの心を救ったのが印象に残っている。

昭明さんが、フチが今の生活からお金を得て抜け出すために主教の教祖となっていく様を見てきたからそこ、不安定な一佐に対して扉越しで、どんな人間でも「生まれつき悪い子供なんていないよ…」と声を掛けた。

そしてその後、一佐はまだ幼かったスミカに同じ言葉を掛ける。
この言葉がスミカが大変だった時に現実から逃避するための助けになっていて、二人が出会う前から昭明さんからスミカへ渡していたものがあったのだと思うと胸がジーンとした。

 

 

【各キャラ感想】

さいごにこの作品を彩った、各キャラクターへの想いを綴ります。

 

【昭明さん】

スミカと共に成長していく姿が良かったな。

頭では真面目に固く考えているけど、スミカの事に関してはいい意味で先に体が動く(抱きしめあげたり、手を繋いだり)シーンが多々あって、スミカの事を想っているのが伝わってきて良かった。

あとふとしたシーンで、結構反応がお茶目で可愛かったりしたのがポイント高かったです。

 

【スミカ】

スミカの笑顔からしか得られない栄養がある気がします。
いつまでも無邪気に、昭明さんを大切にしながらゆっくりと生きて欲しい…。

あと無邪気なスミカが読者に見せて様々な気持ち、

  • 人を慈しむ気持ち
  • 人を好きになる気持ち
  • 友達と過ごす楽しい気持ち
  • 憎い相手を落しめたい悪しき気持ち
  • 他人が分からなくて怖い気持ち
  • 過去を思い出して苦しむ気持ち

色んな気持ちが僕にも伝わってきて、自分過去とかと照らし合わせながら読んで感じて、色んな事を振り返る事ができたり、発見できたと思います(ありがとね、スミカ

 

【一佐】

不安定で子供っぽい一面を持つ、イケメン副理事長で絵描きとか最高の属性すぎる…

あと、ある意味スミカ以上に昭明さんの事を気に掛けていて、昭明さんとスミカの関係性をハッキリさせるために、色々と動いてくれる所が好き。

 

【月島先生】

まさか一佐とくっつくとは!最初の方では全然想像付かなかった!!

理想主義というか、完璧主義というかどこかそんな一佐と比べて、現実的な考えての人だから一佐とはいいバランスなんじゃないかな。

幸せは何かと問われて、ビール飲んで旨い肉食う事って答えているのが、月島先生らしくて好きなシーンです。

 

【類】

スミカへ想いを寄せながらも、ずっとスミカの大切な友達でいてくれてたのが良かった。

最初は昭明さんと同じく、普通に男の子だと勘違いしてました…

 

【天羽先輩】

親の重圧で色んな問題を抱えていたけど、色々あってスミカや昭明さんから助けられたりしながら、スミカと友達になったことで、最後はちゃんとアナウンサーとして自分の道を進んでいて素敵だなって思った。

何気に一人で大学も頑張ってて、強いぞ天羽先輩!

 

【フチ先輩】

昭明さんが彼女の事を救えなくて色々悩んで考えたからこそ、スミカは救えたのかなって思います。
昭明さんとは育った環境が違っていたから、考え方も価値観が違ってそのすれ違いで若き日の昭明さんがボロボロになっていくのが見ていて、胸がズキズキしました。

正直彼女の事は僕自身も未だに理解できてないです……

 

最後になりますが、
8巻の最後に付いているおまけのカーテンコールはこの物語が好きなら読んでいて絶対に幸せな気持ちになれるので、Web版だけ読んで終わってる方(8巻買ってない方)は絶対に買った方がいいですよ!!!


あとあと、この感想書くに1巻~8巻までKindleで一気読みしましたが、2回目なのに各シーンでドバドバ泣いちゃいました。
やっぱ良い物語ってすげえなあ、心を震わせてくる。