物語は心の栄養素

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美女ゲ『初めての彼女』感想 ~”純愛”と”NTR”が共生する、風俗を題材にした生きることの葛藤を描く物語~

Waffle『初めての彼女』タイトル画面
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『作品紹介(ネタバレ無し)』

「純愛」かつNTR
矛盾している様な二つがの要素が絶妙なバランスで描かれる。
始まりは、主人公が初恋の女の子と風俗嬢として出会う所から。

物語が進行していく中で、以下の様な内容が描かれる。
・学生時代は清楚で可憐だった初恋の人が何故、風俗嬢をしているのか?
・男に買われる風俗嬢の心情とその葛藤は?
・風俗嬢だったとしても彼女を愛する主人公の待つ未来は?

そんな物語を通して、愛すること、信じること、秘めること、大人になること、生きていくことで出会ってしまう様々な心の葛藤が丁寧に描かれます。

 

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以降、ネタバレ注意!!!

 

 

 

※感想は概ねプレイ時の時系列順です。
 誤字や文法間違い、解釈違い等があるかもしれません。
 あくまでも個人的な想いなので、寛大な心でよろしくお願いします。

 

 

【憲秋主観√】

『全てが順調で不安』

大好きな雪宮さんに再開できて、告白して、両想いで、セックスまでして。
そんな様に順調に進みすぎているから、逆に不安

読了後追記
幸せな日常はもう遠い過去のように感じる。でもあの時の初心で純粋な感じの空気が嫌に懐かしいな…

 

『雪宮さんに犯される憲秋』

憲秋は雪宮さんに跨られ腰を振られて、強制的に快楽を貪られる。
互いを愛したセックスというコミュニケーションじゃなくて、ただ純粋に快楽を求める様な性交。
憲秋の雪宮さんに置いて行かれた様な感覚が身に染みてきた。

このシーンで初めて、『初めての彼女』という作品がNTRという事を自覚できた。
それと雪宮さんが他人によって変わって、憲秋と心が通じ合わなくなるもどかしさに気付いた(物語の序盤が甘々だったのはこういう理由か…

そして事後の朝の別れ際に「ばいばい。また指名してくれるの、待ってるね」って言われた時は、軽く寒気がした(君たち恋人…だよね…?

 

『立ち絵が変わった雪宮さん』

髪色と服装が変わった彼女を見た瞬間、クリックする手が止まった。
変わってしまった…ああああ

読了後追記
この瞬間の絶望感は落差が凄まじくて、物語の中でも随一な衝撃的な瞬間だったな…

 

『雪宮さんの心が分からない』

本当に憲秋を想っている?ベットでの涙の理由はなに?
もう全然何もわからないよ…

店長と幸せ?そうに交わっているし、もう分からん…
あの涙は偽物なのか?でも違う気がするとも思う…

読了後追記
彼女の心が壊れる前の最後の灯みたいなものだったんだろうな。
まだ心の中に憲秋を大切に思う気持ちが残ってて、それが無意識に溢れてきた感じだと思う

 

『雪宮さんを想ってた憲秋』

憲秋は店長(高橋)と交わる秋乃を見ても、どこかこれは現実じゃないと思いたかった。何故かって言うと憲秋は清楚で可憐な、学生時代からの延長である雪宮さんを想っていたから。
ずっと心の中で風俗嬢である”秋乃”じゃなくて、雪宮さんの事を想っていた。どうやっても風俗嬢となってしまった彼女の現実を直視する事から逃げていた。

これを書いてる僕自身も感想を書く上で、”秋乃”じゃなくてあえて”雪宮さん”って書いているから、僕も憲秋と同じく現実を直視出来ていなかったな…

あと店長である髙橋さんと秋乃が交わるシーンは本当にエロさを微塵にも感じず、なんだこれ?って頭に疑問を浮かべながら見ていた。

 

NTRの文脈』

序盤で彼女と無事に付き合えたりして、完全に幸せな雰囲気って訳ではないけど凄く順調で幸せなところから、絶望の底まで叩き落とされる所がNTRものの文脈なのかって感じた(エロゲでNTRは初めてだから新鮮だ…

あと「妹と彼女」最初の終始絶望的な慧√とは違う印象だった。
やっぱり本作品だと最初の付き合えてる?ちょっと幸せな時間があるから、少しだけ気を休める事ができたと思う

 

 

【秋乃主観√】

『風俗嬢を選んだ秋乃の心境』

秋乃の母子家庭で母親が入院していて、常に借金に押しつぶされそうで親族も近所の人にも助けて貰えない中で、最後の選択肢として風俗を選んだ決意を見て、何ともいたたまれない気持ちになった。
風俗はいけない事。彼女自身もそう思ってるし、バイトのパートの人も口を揃えていう。
だけど借金を返して大学に戻るためには、時間もお金も何もかも足りないから、心も体も本当に擦り切れてしまう前に風俗を選んだ重さが伝わってきて、本当にやるせない。

 

『憲秋と出逢い、結ばれた仕合わせ』

風俗嬢な汚い自分でも愛してくれる、大切に想ってくれる。
中高生の時にただ知り合いで、ちょっと話をしたことがあって、たまたま彼と誕生日が同じで、そんな普通な関係性だった憲秋が自分が心も体も精神もボロボロだったタイミングで好きだと告げてくれる。

自分が辛いとき、支えてくれると告げてくれた男の子に巡り会えた仕合わせ。
だから秋乃は事後、憲秋とベットで横たわりながら以下の様に思ったのだろう。

仕合わせなの。
この人になら、わたしの全てを上げられる。
わたしはこの人を、高木くんを――。

 

『プレイするモチベが低い理由』

風俗嬢として働きながらも、憲秋の事を一途に想い続けてくれる秋乃が高橋に心を奪われてしまう所を見たくないからだと思う。
結末というか悲しい未来が分かっているから、その過程も見たくないし、その結末ももう一度見たくない。
現実から目を背けているんだな~きっと。
あとNTRは不得意だなって感じる、心のモヤモヤが収まらない。でも文章や描写が巧みだから読み進めるのは面白い…

 

『心が壊れた秋乃』

秋乃は憲秋の事を愛してたからこそ、心が壊れてしまった。
本当は憲秋だけだった唇や秘部を高橋に奪い取られてしまって、それでも生きてお金を稼ぎ続けなければならないから本当の心を少しずつ閉ざしていく。
自分は風俗嬢だから、風俗嬢らしい自分を演じていく。その象徴が茶髪に染めた後の秋乃。

でも茶髪に染めた後も本来の秋乃の心は少しだけ残っていて、憲秋に初めて抱かれた時と同じ自分の部屋のベットする性交する事で昔を思い出す。
でも過去を自覚しても、もう初めの関係には戻れない。
そんな秋乃の心が描かれてる以下の文章が僕の心に澱のように残ってる……

必死だった。
目の前にあるものに、ひたすらにしがみついた。
そうでもしなければ、壊れてしまいそうだった。
ううん、私は壊れている。
とっくの昔に壊れている。
取り返しのつかないくらいにもう壊れていて、最後の最後に残った正気のかけらも、今、砕ける。
これは、そう、これは。
心の隅にかろうじてこびりついていた、私の―わたしの、魂の断末魔―。
重く重く無慈悲に圧し掛かる何かで潰れそうになっている心の軋みを。
苦痛と懺悔の声を、口から吐き出して助けを求める。
ごめんなさいと、顔を伏せる。
ごめんなさい、やっぱりわたしはダメでした。

 


【自暴自棄√】

『幸せな日々が秋乃自身を苦しめる』

上手く同棲が軌道に乗って、幸せそうな日々を過ごす二人。
だけど秋乃は普通な幸せに近づくほどに、自分が風俗嬢なのに普通な憲秋と過ごしている事が嫌になってくる。

風俗で男のペニスを握りしめた手で彼の手や、色んな物に触れて、穢してしまう罪悪感。
そんな罪悪感から早く抜け出したくて、秋乃が愛人契約に手を出してしまう心情が丁寧に描かれていて、だから読んでいてリアリティを感じて胸が苦しい。

 

『大人になること』

それは自分という存在を正しく認めること。
自分の良いところも悪いところも、自分のすべてを正しく認識して認めること。悪いところに目を背けるじゃなくて、向き合うこと。
それを教えてくれてた団地の公園での老婆との会話がとても、とっても良かった…

叱られるのが怖い。
褒められると嬉しい――それではなく、叱られずに済んだと安心する。
この安心の継続を求めて、わたしは更に何でも言うことを聞いてしまう。
躾けられたゆえ。生来の臆病さゆえ。
あさましく愚かしい、臆病の淫売。
弱くて、臆病で、媚びを売ることでしか生きていけない人間。
それが、わたしだ。

大人になることが、自分という存在を正しく認めることだとしたら。
秋乃「こんなの、知りたくなかった…知りたく、なかったよぉ…」

良い子にするのは人に好かれたいんじゃなくて、𠮟られないため。
他人の事を考えているんじゃなくて、完全に自分の事だけを考えている守りの行動。

いい人を装うのは人を想っているんじゃなくて、いい人に見られる事で自分を守るためな自分本位な行動(すげえ分かる…分かる、この気持ち

 

『救いの無い最後』

秋乃が選んだ道は「風俗嬢」として生きていくこと。
だけど僕自身が秋乃が選んだ「風俗嬢」として生きていくことの覚悟というか、決意をハッキリと理解できていない気がする。

でも分からないなりにも考えてみると、「風俗嬢」として生きていくことは罪(*1)を犯した彼女にとって自分への罰なんじゃないかなって思う。
誰かの子供を孕み、AVに出演して、自分自身をとことん痛み付けることが、秋乃が傷つけてしまった人(母親、憲秋など)への贖罪だと感じた。

 

▶秋乃の罪(*1)

  • 入院している母親へ秋野が「借金してしまって大学も休学し追い込まれた暮らしをしているのはお前のせいだ」と心の中で燻っていた本音をぶちまけたこと
  • 母親に風俗嬢をしている事がばれる原因となった男の過程を壊したこと(それに伴って無邪気な子供から自分がした事の大きさを教えられる
  • 憲秋が借金の問題を一緒に解決させて欲しいと願い出てくれたのに、”他人を頼るべきではない”母親からの言葉に縛られ断り、風俗嬢を続けてしまったこと

 

 

【さいごに】

最後は雑多に思った事を書いていきます。

 

プレイして感じたのは喪失感というか、何も出来なかった気持ち。やるせなさって言えばいいのかな。
食べ過ぎて胃がモヤモヤしている感じと似てる、気持ち悪いけど何も出来なくて時間しかそれを解決してくれない感じ。

でもこの物語で感じたのは純愛。互いに心から想いあっている。
憲秋/秋乃ルートでは、秋乃は憲秋を想いながら壊れてしまう。
自暴自棄ルートでは、秋乃は憲秋を想いながらも自分を傷つけ続ける。

 

あと最新作の『妹と彼女』と比較すると、いい意味で『初めての彼女』の方が後味悪いと感じましたね。
『妹と彼女』だと満月との最後の別れは彼女なりに兄妹の事を考えた結論だと分かるからスッキリとした読後感だけど、『初めての彼女』は秋乃が孕みながらAVに出演して終わりを迎えるから読了後もモヤモヤが残る。
これがNTRゲーの醍醐味なんだろうな……、やるせないな…辛いな…(現実逃避

 

さてさて、最後に各キャラへ思った事を書いて〆ます。

【憲秋】

秋乃の事を純粋に信じて待っていたり、秋乃の傍にいる時は秋乃の事を第一に接していて優しくてピュアで可愛い男の子だったな。
秋乃の言動で自分が秋乃に嫌われてしまったのでは?って時折悩むシーンも良かった

 

【高橋】

一周回って嫌いじゃなくなってきたかも。
何だかんだ秋乃が心底嫌がる事はしないし、自分の地位や人間関係は壊さずただ刺激的な快楽を得られればいいって感じの人間性だから、凄くシンプルな人だなって感じ。

あと全然関係ないキャラだけど、閃光のハサウェイのケネス大佐味を感じたな(ギギちゃんが秋乃でハサウェイが憲秋って感じ

 

【夏木】

憲秋想いのいい親友だった…
ちゃんと怒ってくれる所から憲秋の事をちゃんと考えているのが伝わって、本当にいい奴だ。

 

【アキラ】

秋乃ルートだと、アキラの顔を見ることが唯一の救いだった気がする…
チャラい外見だけどきっちりと仕事をこなすし、秋乃と色んな雑談をして心を和ませようとしていた所が良かった。
憲秋と夏木、秋乃とアキラの関係性が物語の中で一番の癒しかも…

 

 

※参考:『妹と彼女』感想リンク

una-008.hatenablog.com