物語は心の栄養素

アニメや美女ゲなど、”物語”で感じた想いを保管するためのブログです

アニメ『少女☆歌劇レヴュースタァライト:TVアニメ&劇場版』感想・考察

TVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト
画像引用元URL:https://revuestarlight.com/wp-content/themes/revuestarlight_v0/assets/images/common/animation/tv/visual_pc.png

 

見たことのない景色、
観測したことのない煌めき、
未知が貴方を待っている。

眩しいですよねぇ、わかります。

【初めに】この物語の面白さ

 華恋が今までの自分を破って、スタァを目指す姿。そこに自分(視聴者)の心情を重ねて、今までの自分を越えて成長していく華恋の続きを見たくなる。そんな再生産への、欲求がこの物語の面白さの根源。
 また多彩なキャラクターが織りなす輝きの物語。人と人との関係性、「情熱」・「渇望」・「誇り」・「嫉妬」・「約束」・「孤独」・「絆」。色々な感情から彩られる舞台少女達が、自らの気持ちに向き合い咀嚼しどう生きるか、そして何を選ぶか。それぞれの輝く星へ至る道を眺め、祈り、見届ける、その快感がこのアニメーションにはある。

 

※以降ネタバレ注意!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※以降、筆者の妄想全開です。
 それを踏まえてお読み下さい。
 間違いや誤字・脱字、すみません。

 

TV版 感想・考察

【1】

キャラクター解説

まず色とりどりな9人について、それぞれ以下の要素について述べていく。特に3項の口上はキャラクターの内面が素直に表立っており、心理分析の際に大変参考になった。
 1)その人にとって追い求める”輝く星”は何か
 2)武装の解説と考察(武器は下画像参照)
 3)舞台口上原文
 4)口上の考察とキャラクターの心理

 

〇出席番号1番:愛城華恋

1)ひかりと約束した、トップスタァになること
2)サーベル。それは王道、だけど誰かの真似の様なもの。レヴューの始まりは純粋にひかりという幼馴染を救いたいという感情から。どんな武装でもいい、参加したい、自ら関わりたい、そんな感情から勇者の初期装備の様な武装が顕現する。
3)「1話:初期」
 星屑溢れるステージに、
 華恋に咲かせる愛の花
 生まれ変わった私を纏い、
 煌めく舞台に飛び込み参上
 99期生 愛城華恋
 みんなをスタァライトしちゃいます

「最終話:星摘みのレヴュー時」
 星屑溢れるステージに、
 華恋に咲かせる愛の花
 99期生 愛城華恋
 あなたをスタァライトしちゃいます
4)真っすぐで純粋な心
第1話と最終話で若干口上が変化する。ここから見えてくるのは、1話でレヴューに飛び込み参加した時点で想いは殆ど定まっていたということ。唯一変ったのは口上の最後、”みんなを”→”あなたを”に変化した。これはひかりとの約束が自分にとって全てだと、そう強く思う気持ちから。最終話の口上は諦めないクレールとなるための気持ちが溢れる、素晴らしいものだった。

 

〇出席番号2番:石動双葉

1)香子が一番輝く瞬間を、一番近くで一緒に演じ感じること
2)自分の道を突っ走る、そんな血気溢れる心。道を切り開くための強力な武装、それがハルバート。突き・割り・断つことで歩むべき障害を全て排除する。
3)香子と合同の口上(双葉は)
 舞台に踊りに行き帰る、
 歩み進んだ二人道
 だけど私も見つけちまった、
 夜空にそびえる一本道
 99期生 石動双葉
 気合い入れて、突っ走ります!
 99期生 花柳香子
 最後まで、つきおうて貰うで!
4)二人の道から、それぞれの道へ
舞台に対する最初の衝動は、香子が一番輝くところを一番近く一番初めに観るという約束を守りたいということ。だからずっと追いかけてきた、でも追いかけるだけでは嫌になった、香子と一緒に輝きたい。そこから自分自身の道を努力で切り開くようになっていった。(香子を甘やかす彼女の姿が好きです)

 

〇出席番号11番:西條クロディーヌ

1)トップである真矢の煌めきと対等になる努力して、追いつき認められること
2)華恋と同じサーベル、しかしその意味は対局。自らが王道を征き貫く覚悟と、誇りを示すもの、それが彼女のサーベルという武装
3)輝くチャンスは誰もが平等
  だから愛のダンスで誰より熱く、
  自由の翼で誰より高く
  99期生 次席 西條クロディーヌ
  スタァになるのは、この私!
4)次席だからこそ見えるもの
一番になりたい、誰しもが輝きたい。そのための努力を決して惜しまず、誰よりも厚く自由に羽ばたきたいという、強く気高い想いを秘める。真矢に負けていくことを認める、それでも真矢に負けない決意がある。純粋にトップスタァを目指す精神性が心にグッと来ました。(努力家クロちゃん、めっちゃ好き)


〇出席番号15番:大場なな

1)クラス皆で演じた、眩しすぎる第99回聖翔祭
2)日本刀。トップスタァを貪欲に勝ち取るための、近接格闘戦重視の武装。恵まれた体躯から放たれる斬撃で相手を確実に仕留める。殺傷能力・靭性が高い日本刀は、絶対に折れず再演を繰り返すという固い決意の現れ。
3)舞台に実った、たわわな果実
  だけど、みんな柔らかだから
  誰かが守ってあげなくちゃ
  99期生 大場なな
  私が守るの、ずっと、何度でも
4)誰よりも優しい心の持ち主
誰もが傷つかない様に第99回聖翔祭を繰り返す。見えない、形にできない、眩しい、煌めく最高の舞台を夢見る。まさしく舞台少女。
第九話のレヴューで華恋に敗北した彼女。99回聖翔祭よりも、華恋の輝きが眩しく見える。それはばなな自身が少しでも前に進みたいと、心の底では思っている。それが暗示されている。
そして新しい純那(今までのループで見たことない)を見つけたことを自分が楽しいと思える、それに気付いたばななはもっといいものへ変わりたい心情と向き合うことが出来る様になった。(ばななナイス!)

〇出席番号17番:露崎まひる

1)大切な人を暖かくすることの出来るスタァになること
2)ひかりに華恋を取られそうになり、嫉妬に狂った心。華恋以外の全てを完膚なきまでに壊しつくしたい、そんな心情を現した武装がメイス。重く振りかぶった一撃で、どんな物も壊しつくす。
3)煌めく舞台が大好きだけど、
  煌めく貴方はもっと好き
  廻る廻るデュエットで、
  ずっと二人で踊れたら
  99期生 露崎まひる
  ずっと傍に居たのは、あたしなんだよ
4)自分の一番の煌めきが他者になってしまったまひる。華恋に依存し、離れられなくなった。しかしひかりの登場で少しずつ変わっていった華恋。自らのための華恋のお世話、それが出来なくなったまひるは、全てを完璧にこなすひかりに嫉妬していく。
しかし自分自身の動機(大切な人を笑顔にする、暖かいスタァになる)ということを思い出し、一人で進み初める。
自分が選んだってことは、ほんの少しでもそこに何か理由や動機があったはず。選んだ道の中で自分とは比べ物にならない強い意志を持った人に囲まれていると、周りが眩しすぎて自分自身の動機が霞んで見えなくなってしまう。そんなことってよくあると思う。
周りを観察して参考にすることは大切なことだけど、それに飲まれてしまってはいけない。自分自身の道を自らのペースで進み続けることと、時には選んだ理由を振り返ってみることが大切だと思う。(色んな「華恋ちゃ~ん」が聞けて良かったです)

 

〇出席番号18番:天堂真矢

1)一番星、トップで居続けること
2)コウモリの羽の様な装飾のバスケットヒルト(指保護の覆い)がついたレイピア。王道を往く、尚且つ装飾により高貴な雰囲気のある武装。真矢の誇り高い心情が現れている。
3)月の輝き、星の愛。
  あまたの光集めて今、
  あなたの心に届けましょう
  99期生 主席 天堂真矢
  今宵、煌めきを貴方に
4)夢は見るものではなく、魅せるもの。頂に煌めく星は一つ。This is 天堂真矢
自らが既に輝いていること、色々な人から羨望のまなざしで見られていること。それを自覚しているからこその口上。輝くものは追われる、それは真理であり、愛である。
(クロディーヌを優しく、厳しく、対等に見る目線が大好きです)


〇出席番号22番:花柳香子

1)追ってくる双葉と横目に、世界で一番で輝くこと
2)薙刀。中距離から相手に近づかせずに、長いリーチを生かして戦う武装。これは香子のずる賢く計算高い性格が滲み出たもの。長大なリーチから繰り出される攻撃は、まさに舞の様。日本舞踊の家元として、自分の特技と華やかさを際立出せる。
3)双葉と合同の口上(香子は桜色)
 舞台に踊りに行き帰る、
 歩み進んだ二人道
 だけど私も見つけちまった、
 夜空にそびえる一本道
 99期生 石動双葉
 気合い入れて、突っ走ります!
 99期生 花柳香子
 最後まで、つきおうて貰うで!
4)ワガママ可愛いガール
香子は追いかけて貰いたい、双葉は一番近くで香子を見ていたい。そんな二人で歩んできた道。同じ道を歩いてきたとしても、観てきた景色は異なる。そして双葉は自分の道を突っ走り始める。香子もそんな双葉を横目に見ながら、少し違うけど並行しているようなそんな道を歩み始める。(あざと可愛い、だと…)

 

〇出席番号25番:星見純那

1)自分だけの星を見つけるために、舞台に立ち続けること
2)弓。遠距離から完璧に相手を封じ込め、圧倒する戦い方。優等生的・学級員長的な完璧主義の心象が具現したもの。どのキャラクターとも武装が被っていない(サーベル系は多い)のは、真矢やクロディーヌに憧れつつも自分の星を掴みたい、自分だけの個性ある煌めきを掴みたい、そう願い渇望する心から。
3)人には定めの星がある
  綺羅星(きらぼし)・明星(あけぼし)・流れ星
  己の星は見えずとも、
  見上げる私は今日限り
  99期生 星見純那
  掴んでみせます、自分星
4)凡人の戦い方
人には何かに成る定めがある。しかし何になるかは今の自分には分からない。ただ自分の将来について、ボケっと考え眺めるだけでは何も起こらない。そんな能天気な自分とはおさらばだ。自らの将来を勝ち取る決意と勇気を持った、覚悟の口上。
まだトップとは遠いけど、自分なりに自分の星を目指す。とても共感できるキャラクターでした。(「掴んでみせます、自分星!」、私の大好きな言葉です)

 

〇出席番号29番:神楽ひかり

1)華恋と一緒に約束した、スタァライトの舞台に立つこと
2)イギリス留学時代の武装はミドルソード。そこでレヴューに破れて煌めきという名の自信を失ってしまう。その失った自信の量を象徴するのが、短くなってしまったダガー。しかしダガーを投げ立体軌道で攻撃する、失いながらも知恵を絞り抗う、今のひかりの精神性を現す武装
3)「8話:1度目」
 強く掲げた手の掌のひらすり抜け、
 奈落に落したあの日の誓い
 再び登る、定めの舞台
 たとえ悲劇で終わるとしても
 99期生 神楽ひかり
 全てはスタァライトのために

 「10話:レヴューデュエット時」
 強く掲げた手のひらに
 華恋に咲かせる、愛の花
 たとえ悲劇に終わるとしても
 煌めく舞台に、飛び込み参上
 99期生 神楽ひかり
 99期生 愛城華恋
 

 「最終話:星摘みのレヴュー時
 生まれ変わった、煌めき胸に
 溢れるヒカリで舞台を照らす
 99期生 神楽ひかり
 あたしの全て、奪ってみせて
4)レヴュー振り回された先には
唯一、口上が2回変化したキャラクター。1度目と2度目はどうしても、悲劇が連想される。それはレヴューの先に希望が見えていなかったから。しかし3回目の口上は星摘みのレヴュー時、結末が変化する希望を抱き、舞台に明るい変化が見えた。(彼女にはとにかくお疲れ様でした、と言いたいです)

 

 

【2】

”アタシ再生産”・”戯曲スタァライト”について

TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト
【画像引用元:オープニングアニメーションより】

”アタシ再生産”を語るうえで、戯曲スタァライトの説明は外せない。故にまずスタァライトについて振り返る。

 

「戯曲スタァライト」とは

 スタァライト、それは星の光に導かれる女神たちの物語。これは遠い星の、ずっと昔の、遥か未来のお話し。小さな国の、小さな村の、夏の星まつり。一年に一度、降り注ぐ流星の下でフローラとクレールは運命の出会いをした。そして来年の星まつりで会うことを約束する。
 16歳になった星まつりの前年、クレールは事故で記憶を無くした。星摘みの塔の頂で、星を摘むことが出来たならクレールの記憶を取り戻せるかもしれない。
 小さな星を摘んだなら、あなたは小さな幸せを手に入れる。大きな星を摘んだなら、あなたは大きな富を手に入れる。その両方を摘んだなら、あなたは永遠の願いを手に入れる。星摘みは罪の許し、星摘みは夜の奇跡。
 歌を頼りに二人(フローラとクレール)は星摘みの塔に辿り着く。そこには500年前にこの塔に幽閉された、眠り、死にゆく、罪深き、女神たち。何故ここに囚われたのか、どんな罪を犯したのか、長き時の中、それすらも忘れてしまった女神たち。「ああ、また繰り返すのね、絶望の輪廻を。星明りの下で」
 星に触れ、記憶を取り戻すクレール。星の輝きに目を焼かれたフローラは、塔から落ちる。
⇒そして結末は3つに分岐する

「結末1:英語版スタァライト
残されたクレールは星を掴もうとした罪を償う為、星摘の塔に幽閉された。新たな罪人として。永遠に離れ離れ、悲しいエンド。

「結末2:第99回聖翔祭スタァライト
クレールと永遠に離れ離れになった。そして頭上では永遠と星々が瞬き続けるのであった。これも永遠に離れ離れ、悲しいエンド。

「結末3:星摘みのレヴュー(第100回聖翔祭)」
諦めなかったフローラ、もう一度立ち上がる華恋。クレールとフローラ、ひかりと華恋のハッピーエンド。

 

「アタシ再生産」とは

「1回目:アタシ再生産」
華恋が今までの遅刻したり、まひるに朝起こしてもらう様な自らとは決別して、自分から物語の主役になる事を決める。唯一無二の親友であり幼馴染であるひかりを助け、幼いころの約束であるスタァになるために。自分を変革すること。

「2回目:アタシ再生産」
戯曲スタァライトの結末3を叶えるために、クレールとフローラの悲しい結末の物語を書き換えること。
今まで見たことない、感じたことのない、未知を見たい観測したい。現在までの全ての常識と認識を書き換えて、再生産して。運命の舞台、自分の未来は書き換えられる。自らの欲望と、希望と、エゴを全てさらけ出して変革する。
戯曲スタァライトになぞらえて、クレールはひかり、フローラは華恋。シナリオに沿わない、新しい結末を迎えるために努力するフローラがあったかもしれない。そう思う、発想する、そして足掻くことでクレールを救えるかもしれない。華恋の希望が奇跡を起こし、アタシ再生産。未来は変わる。

 

【3】

”キリン”、正体の考察

まず結論から。
キリンそれは舞台少女の煌めきたいという感情と、煌めく運命の舞台を見たいという私たち(視聴者)の感情が産んだ、レヴュー主催者という舞台装置。

舞台は生もの。同じキャスト、同じ演目、それでも同じ舞台にはならない。視聴者自身も舞台装置の1つ、劇場の空気感や歓声、拍手など違う舞台になるファクターは沢山。時を越えて永遠の輝きを放つトップスタァを見たいがために、舞台少女達をレヴューし競わせる。それがキリンの舞台装置としての役割。

華恋2度目もアタシ再生産を見てキリンが叫んだ言葉が、それを物語っている。
「なぜ私が見ているだけか、分からない?わかります」

「舞台とは演じるものと、観るものが揃って成り立つもの」
「演者が立ち、観客が望む限り続くのです」
「そう、あなたが彼女たちを見守り続けてきたように」
「私は途切れさせたくない」
「舞台を愛する観客にして、運命の舞台舞台の主催者」
「舞台少女たちの永遠の一瞬、迸る煌めき」
「私はそれが見たいのです!!!そうあなたと一緒に」
「わかります。」

 

 

 

 

 

劇場版 感想・考察

【Ⅰ】

TV版と劇場版の繋がり

劇場版、それはTVでは描かれなかったレヴュースタァライト4つ目の結末を描く物語
諦めなかったフローラ、這い上がってきた華恋を置いていった。ひかりは星摘みの塔を降り、華恋から離れる。華恋の広がるべき未来と、見惚れる恐怖を思いながら。
 ※詳細はⅢ. 終幕にて述べる

 

神楽ひかり
「生まれ変わった、光を胸に
 命が求める新たな血肉
 歌い、踊り、奪い合う
 それが野生の本能ならば
 99期生 神楽ひかり
 定めは変わる、舞台もまた」

「さようなら、愛城華恋」

 

 

【Ⅱ】

”キリン”その存在の変革

TV版からキリンの存在が変革した。
それはただ見守るだけのレヴュー主催者という舞台装置から加えて、舞台に火を燈すための舞台少女達の糧という役を手に入れたこと。


この変化はキリンに、舞台少女の煌めきたいという感情と、煌めく運命の舞台を見たいという観客(視聴者)の感情に加えて、”アニメーション制作陣のつくりたい”という思いが追加されたことから生じたものだと思う。

ひかりにワイルドスクリーンバロックとは、と尋ねられた際のキリンの回答。
「あなた達が演じる、終わりの続き」

「わがままで、欲張りな観客が望む、新しい舞台」
「そう、あなた達のせいですよ」
「普通の喜び、女の子の楽しみを捨て、演じ続ける運命」
「あまりにも美しく、どうしようもなく惹きつけられてしまう煌めき」
「舞台少女、ですがどんなものにも燃料が必要」
「私はあなた達の糧、舞台に火を燈すための燃料」←Point
「近づけば燃えてしまうような熱、危険ですね舞台少女とは」
「危険だからあなたたちは、美しい」

「ああ、私にも与えられた役があったのですね」
「舞台に火を燈す、その役が」
「わかります。」

舞台に火を燈す、これは観客が舞台を願うだけでは叶わない。クリエイター達が力を振り絞り、時間を掛け、創造しないと決して舞台には火は燈らない。

 

この物語の結末を見せてくれた、クリエイター達と続きを願った観客に感謝!!!

 

 

 

【Ⅲ】

wi(l)d-screen baroque 解説

「wi(l)d-screen baroque:ワイルドスクリーンバロック
・wi(l)d:獰猛な
・screen:ついたて、スクリーン
・baroque:ひとく凝った、過度に装飾的な、形の歪な

開幕:皆殺しのレヴュー

ばなな
「列車は必ず次の駅へ、
 では舞台は?
 私たちは?」
「これはオーディションにあらず」

第101回聖翔祭前夜祭で真矢以外の皆は、全く参加する気力が湧かないほど第100回とオーディションで燃え尽きてしまった。このまま進むと、ただ死が待っているだけ。
それ故にばななは、現状に満足しているみんなを殺す。次の舞台へ上がらせるために。ばななのセリフと、引用画像にもあるように皆殺しのレヴューの開演場所が電車のあることが、以上の内容の隠喩となっている。

 

皆殺しのレヴューで、ばななは”真矢”の上掛けだけは落としていない。上掛けを落としたのは、双葉・香子・まひる・純那・クロディーヌのみ。
真矢だけは自分に求められる全てを理解している。舞台の壇上以外を含めて、全て認識できている。一人だけ既に次の舞台に立てている。

 

 

①:怨みのレヴュー

香子 口上
「幼馴染と手取り足取り
 歌い踊って十七年(とうとひちとせ)
 春のツバキに明日を憧れ
 夏のアヤメに抱いた誓い
 秋のモミジに叶わぬ別れに
 冬のスイセン切捨て、落とす
 99期生 花柳香子
 ここが別れの一本道
 いざ、花と散れ」

双葉 口上
「幼馴染の御用とお世話に
 歌い踊って十八年(とうとやとせ)
 蝶の身勝手、花の戯言
 皆様さぞや、ご迷惑
 駄菓子まみれの腐れ縁
 引導掛けて、いざ勝負
 99期生 石動双葉
 ここが別れの一本道
 さあ、どっちもどっちも」

幼い時から一緒にいた二人が別れるため、決別のためのレヴュー。
香子は双葉が約束通りずっと隣で支えてくれると思っていた、独り立ちする双葉に裏切られた怨み。
双葉はずっと支えてきた香子だからこそ、自分の気持ち(舞台の煌めきを追いかけたい)を理解してくれると思っていて裏切られた怨み。
二人は怨みをぶつけ合い、分かり合っていく。そしてちっぽけな事でいがみ合う互いが”しょうもない”事に気付くことが出来た。双葉はバイクを香子に託し、今度からは反対に迎えに来てもらう未来を約束をする。

花弁に横たわる香子かわわわわわわわわ。
双葉は双葉でイケメンすぎる…(キュンとなるわ、こんなん)

 

 

②:共演のレヴュー

まひる 口上
「宣誓
 私は舞台に立つ喜びを歌い、
 舞台に立つ覚悟を踊り、
 強く、愛しく、美しく
 演じきることを誓います
 99期生 露崎まひる
 夢咲く舞台に、輝け私」

まひるとひかり、二人はライバル。互いを認め上を目指す、そんな関係性。まひるがひかりを奮い立てるためのレヴュー。
まひるはひかりのことが大っ嫌いなまひるという、観客(視聴者)が求める演技を完璧に演じ切る。完璧な演技をすることで、ひかりの本音を引き出す。それは”怖かった”という言葉。
ひかりが華恋の下を去ったのは、華恋がひかりとのレヴュースタァライトのためだけの舞台少女となってしまうことに怖くなったから。ずっと一緒に居ると華恋が甘えてしまう、それを恐れてクレールは星摘みの塔から降りた。

まひるの覚悟の決まり方、これこそ舞台少女ですね…

 

 

③:狩りのレヴュー

ばなな 口上
「今は、今は、と言い訳重ね
 生き恥晒した、醜い果実
 星の遠きに望みを断たれ
 君死にたまふことなかれ
 99期生 大場なな
 熟れて落ちゆく定めなら
 今君に、美しい最期を」

純那 口上
「人には定めの星あれど
 届ぬ、足りぬ、はもう飽きた
 足掻いて、もがいて、主役を喰らう
 99代生徒会長 星見純那
 殺してみせろよ、大場なな!!」

今までの自分を刈取る、狩りのレヴュー。
ばななは愚かで、がむしゃらに、届かないと分かっていてトップスタァに手を伸ばす。そんな何も変わらない美しく、眩しい純那が大好きだった。そんな自分。
純那は偉人の言葉という衣服を身につけ、前を向いて歩いていると錯覚していた自分。
互に過去の自分を刈り取り、新しい舞台へ進み始める。

過去が、純那ちゃんが、脆く眩しいものを大切に大切に。優しく包み込んで離さない。そんなばななが大好きだああああ(オタクの叫び)
自分の言葉で武装した、純那カッコよき!純那の精神性が好き!

 

 

④:魂のレヴュー

クロディーヌ 口上
「月の輝き、星の愛など
 血肉の通わぬ、哀れな幻
 爆ぜ散る激情、満たして今
 あんたの心に叩きつける
 99期生 西條クロディーヌ
 今宵、煌めきであんたを!」

真矢 口上
「輝くチャンスは不平等
 千切って、喰らえ、共演者
 愛も、自由も、敗者の戯言
 天上天下、唯我独煌
 99期生 天堂真矢
 奈落で見上げろ、私がスタァだ!」

求めるを演ずる、そして己の全て剥き出しする魂のレヴュー。
クロディーヌと真矢、互いを認め、さらけ出し、心から楽しみ、褒め合い、高め合い、ぶつかる美しい二人。観客(視聴者)の求める全てを演じ切る、ワイルドスクリーンバロックを楽しんでいるのは高貴な二人だけ。

ぶつかる二人のその姿は今までで一番綺麗で、可愛く、美しく、カッコいい(ホントに好き…、語彙力ぅ…)

 

 

終幕

華恋 口上
「星屑落ちて、花は散っても
 煌めく舞台に生まれて変わる
 新たな私は未知なる定め
 新たな私は新たな戯曲
 愛城華恋は舞台に一人
 愛城華恋は次の舞台へ」

ひかり 口上
「私を照らす全てのライトに
 私に見とれろ、全ての角度で
 今の私が一番ワガママ
 今の私が一番綺麗
 舞台の上にスタァは一人
 神楽ひかり、私がスタァだ!」

[ 華恋を突き放すひかり ]
ひかりは這い上がってきた華恋を置いて、星摘みの塔から降り、距離をとった。これは二つの理由から。

①ひかりの事しか見えていない華恋を、レヴュースタァライト演じ終えた先で何も無い(白紙の進路希望調査票がその心情を示す)と迷い、演劇を辞めてしまうことを防ぐため

②華恋と一緒にいると、ひかり自身が華恋のファンになってしまい、華恋とのスタァライト以外の演目を演じることが出来なくなるのを防ぐため

 

[ 華恋復活の要因 ]
華恋自身の過去を顧みる。ひかりとの約束から始めた舞台少女。
ひかりとの再会の約束のためだけに、今までずっと頑張ってきた?答えはノー。中学生の時に魔が差してひかりの今を確認してしまう。それで再会は殆ど確定している。

いつか会える事が分かってもなお、努力するのは自分が舞台が好きだから。小学生のときも中学生のときも、普通の喜び、女の子の楽しみ、全ての焼き尽くし努力してきた。それを再認識(アタシ再生産)出来れば、復活できる。
 ※中学生時代の回想編に異例ながら、男の子が登場したのはそのため

 

[ 髪留め(約束)にお別れを ]
最終盤、二人の象徴である髪留めが外れ地面に落ちる。そして約束タワー(東京タワー)は折れ、ポジションゼロに刺さる。最後に髪留めを付けてないひかりが、ポジションゼロを宣言し、自ら上掛けを投げ捨てる。

これは以下の事を示す。
・今までの華恋とひかりの約束の終わり(スタァライトを演じ切る)
・二人の関係を解消し、各々次へと歩む決意(ひかりに、華恋に、互に負けない)

 

[ カバンの髪留め ]
華恋はオーディション用のリュックサックに、ひかりはスーツケースに、それぞれ髪留めを留める。これは二人の約束は決して忘れないけど、お互いしか見ていなかった今までとの決別が示されている。

(二人の関係性が尊い、尊すぎる…ああああああああああ!!!!!!)

 

 

 

 

さいごに

まずここまで読んで下さって、ありがとうございます!!

振り返ると初めてこのアニメを見たときに、「何か分かんないけど、すげえ!」という頭悪い感想しか出てきませんでした(笑)。そこでBDを購入をきっかけとして、自分が何を面白いと思ったかを言葉にしてアウトプットしたいと思い、本記事を執筆しました。ほんの少しでも、読んでくださった方の理解の足しになれば幸いです。

また初めてアニメーションについての感想・考察を書きました。ゆえに色々と読みずらい点があったかと思います。ご指摘やコメント頂けると大変助かります。因みにBD特典のブックレット等は未読です(文章が引っ張られるのが嫌だったので)

最後に好きなレヴューは「皆殺しのレヴュー」と「魂のレヴュー」です。また強いて言えばキャラは純那とクロディーヌが好きです(みんな好きで、選びにくい…w)

 

・2022年7月17日(日曜日)
・著者:宇那