物語は心の栄養素

アニメや美女ゲなど、”物語”で感じた想いを保管するためのブログです

美女ゲ『贄の匣庭』感想・考察 ~狂気の中で”愛”と”人間とは何か”を見つける物語~

Chatte Noire『贄の匣庭』タイトル画面
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『作品紹介(ネタバレ無し)』

狂気が溢れた世界観。

本州から遠く離れた島で、権力を持った家と家のいがみ合い。
政略結婚の様な形で権力ある家に婿に入る主人公。
家に定められたものだったが、主人公はその家で幸せを見つける。

そんな幸せの中迎えた婚姻の日にある事件が起こり全てが一変して、狂気の道へ。
狂った島で主人公が見つけるものは一体何か。

 

【 ↓ 公式サイト様 ↓ 】

chattenoire.com

 

以降、ネタバレ注意!!!

 

 

 

※感想は概ねプレイ時の時系列順です。
 誤字や文法間違い、解釈違い等があるかもしれません。
 あくまでも個人的な想いなので、寛大な心でよろしくお願いします。

 

【感想】

『主人公のキャラ設定が好き』

自我の薄い主人公は美女ゲあるあるだけど、その自我が欠落している具合が丁度良い。

自分の出自が特殊で家族を自分のせいで無くしてしまっているから、叶子との関係を築いて家族になることの意味がわからない。
だから家族を知っていく物語が展開されるんだな~って感じれてよき。

それと八坂家に生まれて裏家業の殺し屋として育てられたから、前向きな感情は感じるけど、後ろ向きな感情は感じないって設定が珍しいなって思う。

読了後追記
最初から最後まで、人間っぽく振舞おうとする久郎がマジで可愛かった!!

 

『久郎の告白とキスシーンがよき』

久郎が自分の感情が理解できてなくても、叶子が向けてくれる好きという感情を返したいと思っている事伝わってくる告白前の以下セリフがとても好き。

叶子
「私が、好きだと?」
久郎
「そうだ。そう言った」
叶子
「本当にそうだともわからないのに?」
久郎
「きっと、これから先もそうだろう。
 俺が君が”そう”だと思う気持ちをなぞることしかできない」
「完全に一致することはない、それもわかる」

久郎の言葉は叶子のオウム返しからもしれないけど、言葉を返そうと思う久郎の気持ちがとても可愛いな……。かっこいいけど、どこか子供みたいで可愛い。

読了後追記
この告白で今後の未来全てが決まった。
いつも久郎自身がこのキスを思い返しているし、個人的にも凄く大好きなシーンだな…

あとこの作品のキスシーンCG(叶子も希も)が好きだわ、涎の橋がかかっててキラキラしてるのすこだ…

 

『叶子の久郎を想う気持ち』

叶子は幼少期から男を産まずに死んでしまった自分の母親が女として価値が無いのだと教えられながら育てられた。
その教えは叶子の心と体を縛り付ける呪いの様なものだった。だから八坂家で自由に剣を振るう久郎を見て、羨望の様な気持ちを抱いたんだろうなって感じた。

そして久郎を欲しいと願う叶子の気持ちは、真っ白な久郎を自分と同じ穢れた卑しい場所に引きずり込みたいというものなのかな。
それか自分は男を産まなければ価値の無い穢れて卑しい女であると知っているから、久郎との子供を孕んで女として価値のあるってただ示したいって事なのかな…

想像していたより叶子の心が混沌としてて良い、狂気の源泉はここか…

 

『久領希との交流』

久郎を想う動機はもっともだけど、何か違和感が付きまとう。
あとまぐわいながら徐々に希にほだされる久郎を見てて、ちょっと複雑…
それと希が叶子と違って手の体温が高いのも、違う人間なんだって改めて意識させられて何か辛い

あのプレイ前からいいなって感じてた対面座位のえちちCGのシーンがやっぱり良かった…
久郎は死んだ目で希を見つめて、希は頬を赤らめ久郎を見つめて、身体は繋がりながらも心は全然通じ合って無いギャップが最高に良い。

 

↓以降:感想で綴っている内容が一気に終盤まで飛びます(感想を残さず夢中でプレイしてました…)

 

『久郎と希の性交を横で聞く叶子の心情』

叶子は希が久郎とまぐわいを聞き、久郎を独り占めできずに恋敵に対する殺意の様なものが湧くのだけど、希の出自を考えると実行に移せない。
希は叶子の子袋を詰めたコトリバコから産まれてきた自分の娘の様なもので、希が存在しているからこそ、久郎との子作りをコトリバコを用いる事で可能だと確信している様なもの。

だから希を手にかけるって事は娘を殺す事でありなおかつ、
希を殺してしまうとコトリバコで子作りという奇跡を起こすために、殺人などを正当化している叶子の心の拠り所(希がいるからこそ、子作りの奇跡に縋れる)を失って壊れてしまうのかなって思った。

 

『希の産まれと最期』

希はコトリバコに壊された叶子の子袋を、父親の頼道が取り出して、子供を孕む事の出来る透子が欲しい願いながらコトリバコに詰め込んで出来たモノ。
叶子の姉である透子が石女であった事をずっと心の澱にしていた頼道の願いと、叶子の久郎への愛情を受け継いだ。だから透子と似ていて久郎を愛している。

そして二荒家での希の最後、自分を構成するしていたもの(容姿や久郎への恋)が他人から与えられたものだと知って絶望する。
でも最期にたとえ一番じゃくても、久郎からの”先に出会っていたら愛していた”という言葉を貰えた事で希が自身の存在を肯定する以下のシーンが良かった。


「ボクを、先に出会っていたら愛してくれた。
 久郎の一番に成り損なったことだけは、ボクのなんだね」
久郎
「―酷い結論だな」

「なんでもいいよ。
 なんにもないより、全然いい」

あと久郎が希の腹を断つ直前のセリフが、久郎が徐々に得てきた人間っぽさを現れてよき。

希「あ……久郎の子供なら、愛してくれるかな」
その呟きに、久郎は数秒間沈黙し、
久郎「……そうかもな」

ずっとずっと子供なんて愛さないって言っていた久郎だから、即答で「愛するわけないだろ」って言ってもおかしくないけど、久郎は希に少なくとも普通ではない感情を向けていたから最期の手向けに優しい言葉を掛けるのが人間っぽくなってマジで良い。

 

『ラストシーン』

子作りという叶子の純粋な願いのために、七草家を壊滅させた叶子と久郎が軍によって殺される。
叶子の子供が欲しいという願いは四季家の教育(子供がつくれないと価値が無い)によって植えつけられたものだけど、最期の時まで叶子が愛おしく匣を抱きかかえていたのが我が子を守るようで良かった…

あと久郎が女を犯して殺す事を楽しんでいる事を自覚し始めているから、普通な人間になることが出来ないと考え、半端な人間もどきとして死ぬこともまあいいかって思って最期を迎えるのも良かった。

 

【考察】

あまり深く洞察出来てませんが、疑問に思った事を少し考えてみました。

 

『希を加えたコトリバコの中身、その行き先は?』

コトリバコの中身、それは叶子と久郎の子供。
でも八坂某が確認した叶子と久郎の亡骸の近くにあるコトリバコの中身は空だった。中身が空になっているって事は、産まれたってことなんだろう。

そうなるとエンディング後のシーンで隆盛を襲っていた何かが二人の子供なんだろうな。

 

『記者のインタビューに答えていたのは誰?』

見た目が希って事は、コトリバコの中身である叶子と久郎の子供の末裔なのかな。
よく考えるとコトリバコの中身がコトリバコの伝説を語ってたり、軍に接収されただろうコトリバコを何故か持っていて(奪取した?)記者に使えって渡す所が怖すぎる。

 

『誰が劉誠にコトリバコを使うように仕向けた?』

七童島の七草家の崩壊を願ってた二荒劉顕か七草蓮華?が三亥とかの薬を使って二荒透子を操った?
それか透子に化けた八坂 依桜が劉誠をそそのかした?(でも先生である依桜は最高傑作の久郎の害する事はしないと思うけど…)

 

『どうやって頼道は死んだ?』

頼道は叶子の腹を裂きの子袋をコトリバコに詰める事が出来るくらいだったのに、何故死亡したんだろう。
死にかけていて最期の足搔きでやったりにしては精密な作業を要求されるだろうから、難しいんじゃないかって思う。

普通に生きて、コトリバコから産まれた希に殺された…?

 

『七童島の舞台はどこ?』

多分八丈島なんだろうなって妄想してます。その根拠は以下の二つ。

①地理・地形的な理由

  • 本土(本州)から手出しが難しいくらい離れている場所にある
  • キービジュアルの特徴的な島の形(二つの山がそびえる)から
     ※ただ作中で描写があった少し大き目の川が八丈島に無いんだよなあ…

以下サイトより画像引用
ページ名「八丈富士|大海原を見晴らす伊豆諸島最高峰-ヤマレコ」
URL:https://www.yamareco.com/modules/yamainfo/ptinfo.php?ptid=371

②村の数

下記URLのサイトに以下の様な記述あって、七草家のモデルになったんじゃないかと。

八丈島には以前、大賀郷村、三根村、樫立村、中之郷村、末吉村、鳥打村宇津木村の七つの村があり、1955年4月1日にすべての村の合併により八丈町が誕生しました。

http://www.hachijo-vc.com/kokkome/m_PDF/0202.pdf

 

 

【キャラ別感想】

みんな狂ってて最高だった…キャラの感想を家別にまとめます。

▶四季家

『八坂 久朗』
最初から最後まで普通っぽい人間じゃなかったのが良かった。
叶子の事だけ考えててどこか赤ん坊の様な、幼子な様子が可愛かったな…

『四季 叶子』
叶子の情緒不安定で狂っている所を受け入れてくれるのは、包容力無限大(叶子全肯定マン)の久郎だけだと思う…本当に。
子供を成すために狂ってて、でもそこが可愛らしくもあって、恐ろしくもあって良かった

『四季 頼道』
子供を成せない透子を見る悲しいまなざしが印象に残ってます。
この人も四季家の血に囚われてしまった、被害者だと思う。

 

▶一蔵家

『一蔵 まどか』
刀利さんの居る場所に行くために久郎に抱かれて殺されることを望んだ。
物語を通して色んなキャラと比較すると、まどかさんはいたって正気だな(震え声)

 

▶二荒家

『二荒 劉誠』
何にも出来ないけどプライドだけ高い坊ちゃんかと思ったら、意外にもカッコよくて好きになった(他の家に対して高圧的なのとかは嫌いだけど)
子供の頃に透子を助けて一途に想ってるところと、透子との絡みはすげー好き

 

▶三亥家

え!?揃いも揃ってまともな奴がいないぞw
小幸ちゃんがフワフワしてて可愛いな~って思ってた頃が懐かしい…

 

▶五社家

『五社 鈴花』
久郎に惹かれた被害者の会の第一号。
まともな恋愛を望んでいた感じだったのに、久郎に無理やりされて喜んでしまう狂った子だった…

 

▶六郷家

この家も三亥家と同じくまともな人間が居なかったな、血が腐っているとしか言えない…
早苗ちゃんのお兄ちゃんへのヤンデレ具合が狂っててよき、好きなのにお兄ちゃんを刺すとか狂ってる。
あとお兄ちゃんである籐太も、内に抱えている性癖が露になる死ぬ前の自分勝手に逃げるシーンとか狂ってたなあ。

 

▶七草家

『七草 燐華』
久郎に惹かれた被害者の会の第二号、堕ち担当。
プライド高い長女が落ちていくのは悲しいね…

『七草 燈華』
KAWAIの権現、物語唯一の癒し枠。
久郎に惹かれつつも、叶子以外に自分の欲望を叶えた唯一の子なんじゃないかな。強い力を秘めつつ、自分を普通に扱ってくれる(痛めつけ分からせてくれる)久郎に惹かれていて、ただそれだけで良いと願ってた。
最期も久郎にボロボロにされて火災の中で逝けて良かったんじゃないかな…

あと攻めでも受けでの良いので、燈華のえちちシーン欲しかったな(小声)

 

▶八坂家

『八坂 依桜』

どこかで実は生きているって、ずっと思ってます。
底知れぬ感じが怖くて、冷血な感じだけど久郎の事は自分の最高の作品?として愛していたんじゃないかな

 

 

【さいごに】

さいごに雑多に感想をつづります。

プレイしながら狂人しかいねえじゃん!?って驚きながらプレイ出来て凄く楽しかった(笑)
まともそうに見えた叶子も、鈴花も、燈華もみんな狂ってて、わーおって感じです。いい意味で期待を裏切られました。
これだから村因習モノは最高だな…

あとMANYOさんの音楽が最高だった。
イノグレさんの「殻ノ少女」シリーズから好きになったので、本作から「虚ノ少女」感を感じられて良かった(楽しさのベクトルは少し違うけど
あと霜月はるかさんのOP&EDも良かったな、特にEDの「コモリウタ」は叶子目線が聞くとマジで響く…

あとあと以下の構図が素晴らしいCGが沢山あって良かった。
えっちい奴も、狂気もいっぱいあるけど、純粋に美しいなって思えた。

  • 叶子と久郎が夜縁側で佇む
  • 希とのキスや対面座位
  • 地下牢の叶子と久郎が再開し叶子が久郎に手を伸ばす
  • 希と久郎がまぐわう横で悔しがる叶子
  • 焼け落ちる二荒の屋敷で嗤う燈華
  • 最期に叶子と久郎が手を握り合いながら死を迎える

 

さいごになりますが、とても本作が良かったのでChatte Noireさんの今後の作品が凄く楽しみです!!